契約自由の原則は、意思表示を一人で十分になしうる成人が、
本心から意思表示をすることを前提にして成り立っています。
民法は、瑕疵(=傷)のある意思表示として、
①冗談で意思表示をした場合を心裡留保(民法93条)
②実態と異なる虚偽の意思表示をした場合を虚偽表示(民法94条)
③勘違いして意思表示をした場合を錯誤(民法95条)
④意思表示が詐欺や強迫による場合(96条)
を定めています。
そして、このような意思表示は無効または取消可能となります。
① |
心裡留保 |
真意ではない意思表示をすること。 | 原則:有効相手が知っていたか、知らないことに過失があった場合には無効。 |
② |
虚偽表示 |
お互いに本気でない意思表示をして、契約の形式だけを作ること。 | 無効ただし、その事情を知らない第三者は保護される。 |
③ |
錯誤 |
重大な要素について勘違いしたまま意思表示をしてしまうこと。 | 原則:無効ただし、重大な過失があった場合には無効を主張できない。 |
④ |
詐欺 |
だまされて意思表示をすること。 | 取り消すことができる。ただし、善意の第三者には対抗できない。 |
⑤ |
強迫 |
脅されて意思表示をすること。 | 取り消すことができる。善意の第三者にも対抗できる。 |
◇例えば…
心裡留保とは、売る気がないのに「土地500坪を1000円で売るよ」と言った場合です。
こう言われた相手方が真意でないことを知り(悪意)、または知ることができた場合には(過失)、
その意思表示は無効となります。
勿論、相手方が過失のない場合は、有効に契約は成立します。
錯誤とは、勘違いをして意思表示をすること。
本当は時計を1万$で売るつもりが、勘違いして1万円で売ると言った場合など…。
法律行為の要素に錯誤があった場合には、意思表示は無効となります。
しかし、錯誤をした人に重過失があった場合には無効を主張できません。
金額的に安価なものの取引であれば、さほど重大な問題にはならない事が
多いかも知れませんが、不動産売買の場合だと高額取引になるので中には
裁判沙汰になる事もあるのではないかと思います。
不動産に携わる者として、そうならない為にも発言(意思表示)に対する責任の
重要性を自覚しなければと思います。