自由にカスタマイズできる賃貸物件
居住者が退去した後、次の入居者の要望に応じた壁紙を使用するようなケースは以前からあったが、この物件ではデザイン事務所と提携し、プロのデザイナーが入居者と一緒になって居住空間を作り上げる点が大きく異なる。しかも、退去時に原状回復義務もない。
「建物を建ててれば入居者が集まる時代ではない」と、カスタマイズサービスを導入。
壁の厚さをはじめ大半の賃貸住宅の質は、分譲タイプに比べて劣る。にもかかわらず、新築の分譲住宅では当たり前となった内装の選択でさえ、賃貸物件では不可能なケースが大半だ。その背景には「礼金や更新手数料などの慣習が象徴するように、長年、賃貸住宅は売り手市場で工夫が足りなかった」ことがある。
賃貸マンション市況は今や空室を恐れるあまり更新料もゼロが主流となり、一定期間の賃料を無料とする「フリーレント」も一般的になってきた。
厳しい環境下にも関わらず、この物件の賃料は、周辺相場に比べて「約15%高い」という強気な設定である。じつは、不動産関係者が最も関心を寄せるのは、カスタマイズサービスのような「工夫」によって賃料を上げつつ賃借人を獲得できるのか否かという点だ。約15%がギリギリのラインだと思う。
賃料のディスカウント合戦も限界に近づきつつあるなかで、果たして消費者は反応するのか。「借り手も賃料や立地しか見ておらす、賃貸物件に多くを求めていなかった」だけに、関係者は不安と期待。