本来、被相続人(財産を残し亡くなった人)が、生前、所有していた財産については、
遺言によって自由に処分することができますが、もし仮に、被相続人が、遺言によって
『全ての財産を愛人に譲る』といった場合はどうでしょうか。
残された家族が、経済的に自立している場合には、それほど問題ない
ケースもありますが、被相続人の財産に依存していた子供や、配偶者に
とっては、生活に困り路頭に迷ってしまうことが十分予想されます。
そこで、後に残された者の生活保障や、被相続人の財産維持・増加に
貢献した者への潜在的持分を顕在化させる等の必要上、相続人には、
必ず受取ることのできる最低限度の相続財産を得る権利が法律によって
与えられています。
この権利が〝遺留分減殺請求〟です。
よく2時間ドラマなどで「被相続人の子供が、私には相続財産がないの‥!?」
などと言っているケースがありますが、法律上では最低限の相続権は保証されている
ということになります。
民法が相続人に保障している遺留分減殺請求は、代襲相続人を含む子をはじめ、
直系尊属と配偶者に限られます。
したがって、被相続人の兄弟姉妹には遺留分減殺請求の権利はありません。
遺留分によって得られる財産の割合は…
◇直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
◇その他の場合には、被相続人の財産の2分の1
となります。
相続開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知ったときから
1年以内に、遺留分を侵害している相手方に請求しなければ、その権利は時効によりなくなります。
また、贈与等によって遺留分が侵害されていることを知らなくとも、遺留分減殺請求は、
相続開始のときから10年経過すると消滅してしまいます。